生命保険物語=第12話=
=第12話= 金満部長、怒る!
少し鼻高になりかけたのを見透かされたかのように、
「まあ、無理強いは出来ないが、契約第1号のお祝いを1杯。」
と言うと、支社長さんが強引にわたしの隣に座り込んできたの。こんなことは初めてで戸惑っていると、
「ささっ、わかばさん、支社長にお酌を。」
一緒にきた白髪交じりの太鼓持支部長がわたしの前にとっくりを差し出す。
でも、何か変。わたしの第1号契約の祝杯と言いながら、支社長へのお酌を私がする、これって!でも、その場の雰囲気でそのとっくりに手を伸ばした途端、
「支社長、逆でしょう。」
なんと声の主は金満部長だった。
「アッ、いやァ、今そう言おうと思ってたとこだよ。」
苦笑いをしながら、支社長はとっくりに手を伸ばすと、
「さあ、おめでとう。これからも頑張れよ。」
うーん、こういうの、本当に困る。
場を取りなすように、若井支部長が、
「でも、セーヌセンターのおかげで今月もどうにか目標を達成出来ましたよ。さすが金満部長」 と、お酒を注ごうとする。
「ところで、若井支部長、100%達成は良いけど、あれから”オチ”はないの?」
どうも、金満部長絡み酒みたい。
「い、いやあ、そう言われると・・・。」
キッ、とした視線を桜田支社長さんへ金満部長が向けたの。
「支社長、うちが達成率92%で今日の会議では怒られたけど、でも、今日は100%でも”成立”でうちより悪い支部が出てきたらどうします?」
もう、雰囲気はすっかりダメ。会議の延長戦だけど、よほど金満部長、腹に据えかねていることがあるらしい。
「まあ、まあ、会議は会議。部長さんも機嫌を直して。」
太鼓持支部長が、間を取りなしたつもりが、逆に金満部長に火を付ける結果に。
「そりゃあ、太鼓持支部長さんは良いですよ。あれだけの優秀な職員さんを抱えて、スタートからゴールまで毎月独走ですものね。」
言葉に窮したように太鼓持支部長がうつむき加減に黙り込む。
横にいる支社長を見ると、これも何か反論する風でもない。
変な雰囲気。
普通の会社なら、支社長が一番偉いはず。その人が気まずそうに黙りこくる。一体、どうなってるの。酔いの少し回った頭で考え始めたけど、とても納得いく答えは見つけられそうにもなかった・・・。ただ、金満部長が支社長に対して何となく頼もしい存在に思えたのは新発見だったけど。そこから先がまったくみえないの。
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