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生命保険物語=第9話=

=第9話=  契約第1号の裏側!
 

 「わかばさん、1件3,000万、おめでとう。」
品川の芝浦に建てられたばかりの20階建ての高層ビルのワンフロアーが、セーヌ研修センターのオフィス。そこに毎朝20代から30代の近隣の支部から選ばれたセーヌレディ30名ほどが集まる。朝礼は10時開始で30分ほど、ラジオ体操、社歌、成果発表、金満部長の話、事務連絡と毎日これが規則正しく繰り返される。

 保険契約の「申込書」を貰うと帰社と同時に事務所のホワイトボードに自分でその成果を書込む。今回の場合「ビッグ終身保険3,000万/500万・わかば」という具合。「ビッグ終身保険」は、平成生命の主力保険で「定期付き終身保険」の平成生命版なの。「3,000万円」は、病気死亡の場合の保険金額だけど、普通これにいろいろな特約を付加して「災害死亡では倍の6,000万円」に設計するのが当時のモデル設計。
 そして「500万は終身保険」の金額なので、3,000万円との差額2,500万円が掛け捨ての「定期保険」となるのだけど、後々、この「2,500万円」を巡ってトラブルが起きたけど、この時は保険商品の中身など分かるはずもなく、ただ金満部長に指示されたままの「転換の設計書」を作っただけだったの。

 もちろん、翌日の朝礼で「ビッグ終身3,000万・1件、わかば」と、自分で成果を発表するんだけど、すると全員の拍手が一斉に湧く仕組み。特に苦労した契約だと「体験談」をすることもあるの。

 わたしの場合もあの電話の翌日、申込書を頂いて帰社するとすぐに「良かったねえ。おめでとう。」と事務所にいた数人から祝福された。そして翌朝の朝礼で改めて成果と体験談を発表することになったの。でも何しろ入社初めての「契約第1号」は、何がなんだか分からない内に決まってしまったのがほんとで、急に体験談といわれても・・・。

 「と、とにかく部長さんの指示通り転換の設計書を作り、ご挨拶に何人かの方にそのプランをお薦めしたら、その内のお一人から電話を頂き、契約に・・・なりました。」
 詰まりながらも、ここまでようやく言い終えると、
 「保険には一杯入っている、という返事がお客様の決まり文句ですが、このようにまだまだお入りの保険の保障額に満足されていないお客様も沢山いらっしゃいます。皆さんも諦めずに自信を持ってどんどんアタックしてみましょう。この1件は、わかばさんが一生懸命に頑張ったからこそお客様も納得された成果です。本当におめでとう。わかばさん。」
 金満部長が後を継いで、歯が浮くような褒め言葉を頂戴して、何かこそばゆい感じ一杯で朝礼は終わったの。
 
 でも、保険の契約がそうも簡単に決まるものかという疑問が沸々と湧いてきたのは、ほんの偶然からだった。契約の保険証券が届いた頃を見計らって、東菱電機の契約者の方のところへ伺った時・・・!
「しかし、わかばさんは良い上司に仕えて幸せだねえ。」
 何のこともないようなこの一言が、保険契約第1号の裏側を知るきっかけになるとは。
「エエッー。おかげさまで私も有り難いと思っています。」
「そうだよねえ。あれだけの熱意がある上司なんて、そういないよ。」
「ね、ねつい、ですか?」
「だってさあ、あの日の翌日、家に来て女房を説得してんだもの。夜、一杯機嫌で帰ったら藪から棒に『あなた、保険に入って!』だからねえ。」
 まさに寝耳に水とはこのこと。

 金満部長が指示して設計書をわたしは作成したんだけど、その「見込み客」に金満部長は自宅を一人で訪問していたの。そりゃあわたしなんかが説明するより説得力はあるし、しかもこれも後で分かったことだけど、東菱電機の法人契約は金満部長が契約していたの。もし説明の節々に役員とも顔見知りということを臭わせれば、そりゃあ社員の奥さんは無下には断れない。
 そうか、そうだったんだ。

「いやあ、気を悪くしないで。あんな部下思いの上司なんてそういないよ。僕もそろそろ保険の見直しをしなきゃと思っていたんだ。」
 顔を曇らせたのを感じたのか、そう付け足したけど、何かもう・・・。    
 

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